🦊: 猫を飼うのがこの頃のはやり。一昔前の、
一億総中流時代には、家にピアノを置くのがおおはやり。
隣家から調子よく漏れてくる子犬のワルツに思わず身をまかせて
いると、急にトテッとこいぬが転けてこっちの心臓に悪い。
いまはピアノブームも去り、次の大型犬ブーム(しもたやの狭い濡れ縁に
くつろぐグレートデーン)も下火になり、代わりに「家族旅行」が
中流家族のいちばんの楽しみ(思い出作り)で、それとネコブームらしい。
日本の政治が心配なら、日本の子供の「有りよう」はもっと心配だ。
つまりは親の有りようだな。偉そうに言うと嫌われる話題だから
おまけにカジュアル生花のシリーズも載せておくからね。
🦊: うちの子とうまくいってないと言う親、または、子供の
思い出作りに力を入れており、多分子供は満足してくれてる
というパワー親。大学だけは無理して卒業させた、あとは
しらん、
と言う親。誰にとっても「ほっといてくれ」の話題のひとつかな。
現に、狐の同年輩にこんな問いかけをしてみると、
「我々戦中戦後世代は、飢餓の記憶の外で実際はなにがあったのか、
知りもしないし、知ろうともしない。あの戦争は、日本が仕掛けた
アジアへの侵略戦争だったということすら」
「ヘツ?そりゃ違うでしょ。アメリカが日本を追い詰めたせいで
こっちは止むを得ず・・」誰かのせいで戦争に引っ張りこまれた
とは、プーチンのセリフだ。じぶんが突然攻め込んで、ナチの
ように民間人を虐殺しておいて。
「日本は石油が必要だったし、貧乏だった。海外に植民して、
その富を分け合い、共に繁栄するにシカズ』という。
そのセリフは、儒教から出た、日本人は人類(といっても
アジア人のこと)の頂点に立つエライモンで、侵略し統治して
当然。資源を全て日本に拐いこみ、現地人を飢えさせても、
土人!!はそれに耐えられる、というに日本的ジョウシキ
で、もちろん何の根拠もないが、当時の日本人は自惚れていた。
共に繁栄、なんてうまいこといっても、実は日本だけが豊かになり、
欧米に対抗する戦力をもてばよい、つまり「侵略」の意味でしかない。
アジアの人々はそれを忘れない。でも日本人は70年ものあいだ、
それを知らずに、あるいはひた隠しにしてきた。政権と文部省だけで
なく、国民の恥じゃないのか」というと、
「施政方針を軍部に任せたのがまちがいだった。なにか遠くで
ドンパチあったようだが俺たちにゃー関係ないさ。教育がどうの
文部省がどうのって、はるか昔のことは正当化して、現在を
活かすのさ」だって。アーレレ、ものは言い様だ。
「日の本は、言の葉の幸わう国ぞ、ま幸くありこそー柿本人麻呂」
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金髪キツネ: お久しぶりー。調子はいかが?
🦊: ありがと。調子は良さげだよ。うまくいけば20年は生き
られるそうだ。
金髪: 留守中、雑草だらけでひどい庭。手伝ってあげようと
思っても、どれが野草でどれが雑草かわからないし。
🦊: おっと、触るべからず。台風も行ってしまったし、
秋草の一番いい時に間に合ってよかった!先生方の腕前は
100%信頼していたさ。だけど2度と入院はごめんだね。
金髪: ああ、ブログの心配か。呑気にPCいじってたら怒られちゃう。
🦊: その他いろいろでさ。牛さんには感謝している。牛の心臓の
弁を整形して、人間の血管の中を通して心臓にとどけて埋め込む。
既に技術は確定しているらしい。20年も生きたくないし、ご入院も
勘弁してほしい。延命治療なんかまっぴら!
金髪: へいへい、そんなら、余計お大事に!
ところで、うちの孫がさ、このところ不登校で、夏休み明けが
心配なんだわ。
🦊: 先生と相性が悪い?
金髪: さあ? 言わないから。私は親とちがうし。
🦊: あんたも昔不登校ぐらいやったこと、あるでしょ?
金髪: 「でしょ」とはなにさ。1度あり。でも1日だけ。
🦊: 何でヤリトゲなかった?
金髪: お母ちゃんが泣いたからさ。凄いこと泣くんだ。
ごうじょっぱりの私でもビックリさ。
作文を書いたら、翌日、先生が私のを読み上げた。
🦊: 嬉しかったろ?
金髪: 嬉しい?先生の手はおっそろしくふるえてた。
ブルブル、カサカサと音が聞こえる。憎しみも頂点
というかんじで。
🦊: フンフン
金髪: で、猛スピードで読み上げた。「なにもない
何もない、わたしの頭には何もない・・・」
🦊: 中学生だった?
金髪: うん。正直でガンコな年頃だろ?あらま欲しい将来の
自分について書けというから、正直に書いたまで。だけど、
先生は正直は嫌いで、そういう生徒は憎かったんだろ。
🦊: 「文をつくる」のが作文だからな。そういえば、
当時は「綴り方教室」や無着成恭先生の本が売れて、
子供を見る目も軍国教育から解放されつつあると
思い込んでいたんだがなー。
金髪: その学校は、親が無理算段してかよわせてくれた
私立校で、今じゃ東大合格率を競う受験校になったらしい。
孫が通うのはごくふつうの学校だけど、「目指すは東大王」
みたいな変な肯定感とメダカみたいな「群れダンス」に夢中だ。
🦊: あんたも言うねー。それで不登校?いい機会だから、気の
済むまで退屈させてやれや。メダカになっちまうよりは増しだ。
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続・ニホンという滅びゆく国に生まれた若い君たちへーー
16歳から始める思考者になるための社会学
秋嶋亮 著 2019年 白馬社刊
🔴 p6 「まえがき」より
繰り返すが若い君たちの脅威とは、外国資本の傀儡と化した
自国政府であり、永劫に収束することのない原発事故であり、
正常な思考を奪う報道機関であり、貿易協定に偽装した
植民地主義であり、人間性の一切を破壊する学校教育であり、
戦争国家のもたらすファシズムである・・・
重層化する危機を突破するには自己超克を必要とするので
あり、自分であり続けるためには不断に進化しなければ
ならないのだ。
この前提において、若い君たちが警戒すべきことは、
「軽薄」という社会病の感染である。すなわち注意すべきことは、
国策化された蒙昧主義を先行世代に倣い受け入れることなので
ある。だからこそ新鮮で可逆性に満ちた脳を持ついま、
知的負荷に耐えながらインテリジェンスの涵養に努めよう
ではないか。
一般に社会学とは「社会だけではなく、私たち全般についての
学究」であるとされてるのだが、実はそうではなく、アカデミズム
の諸領野を大胆に越境し、総合的に仮説を精緻化する作業であり、
引用の多元化と語彙の切れ味を骨頂とする哲学であると定義したい。
そしてそれは日常から乖離したものではなく、私たちの切実な問題
を扱う「生きた学問」なのだ。
なお本書には解決編の一切を記していないことを申しそえておく。
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🦊: というわけで、この本には1ページ1個の割で209の砲弾が
詰められ、それぞれに「社会学的名称」をつけてある。
だが16歳の君がこれを読んでも、「引用の多元性」に導かれる
ひまもなく、弾丸を「のみこむ」ことに終わる、のではないかと
思う。それは氏の意図せざるところだろう。これがベストセラー
に終らず、「語彙の切れ味」を存分に発揮した続編へ発展する
ことを期待。(何?もう出てるって?)
🔴p60 国民が移民に入れ替わってもニホンと言えるのか
-
2018年の東京都の成人約8万3000人のうち1万800人が
外国人でした。中でも新宿区の新成人の外国人比率は
45・8%、豊島区は38・3%と突出し、この国がすでに
他民族化している現実を浮き彫りにしました。しかし
これは歪な国策によりニホン人が激減した結果である
ことから、決して望ましいことではないのです。
このような状況を踏まえ、国民が移民に入れ替えられても
ニホンはニホンであると言えるのかという問いを、元の
部材を全て交換した船は同一の船であるかを問う思考実験に
なぞらえ、「テセウスの船」といいます。
p 56 要するに外資のための移民政策であるということ
移民を推進する経団連企業の筆頭株主は多国籍の投資銀行
です。そのための安価な労働移民によって倍増する利益の
多くが、配当金や役員報酬の名目で国外に流れるしくみ
なのです。しかしその一方で国民が貧困や失業で苦しむ
ことは避けられません。結局のところ移民政策は国民の
ためではなくグローバルな金融家のために決定されたのです。
このような投資の利潤を最大化するための取り組みを
「配当政策」といいます。
p 55 天文学的な移民コストは国民の負担になる。
大企業は安価な人件費という移民の恩恵だけを受け取り
年金や保険などの負担を放棄します。しかしその一方で、
国民は移民に伴い増大する失業給付や生活保護などの
負担を押し付けられるのです。そうなると前者の利益は
何倍にも増えますが、後者の暮らしは
ますます貧しくなります。このように、片方の利益として
付け替える支配の方法を「零和(ゼロワ)概念と言います。
p 53 移民国家は犯罪国家になる
膨大な移民を受け入れたドイツやフランスなどでは、外国人による
強盗などの凶悪事件が多発する事態と、そもそも社会の最底辺
に置かれ、差別や貧困で鬱屈した移民がギャング化することは
歴史の通例なのです。現に最新のEUの世論調査でも、過半数が
「テロより移民が脅威である」と回答しているのです。
このように、政治の失敗によって社会が脅かされるようになる
ことを「危胎(非常に危ない)化」といいます。
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🦊: ゼロワ概念=政治学でいうゼロサム概念=権力者が
服従者から搾取した金額やものの価値は、権力側の利益と
足してゼロになるという概念で、政治権力行使の定石として
肯定的につかわれている。いっぽうで、片方の損失を
もう片方の利益とするのではなく、両方が協調して全体の
利益を増すやり方(プラスサムゲーム)を提唱し、ゼロサム思考
からの脱却を勧めるひともある。移民難民問題においても、
何が国家の価値なのか、(金なのか、住みやすさなのか)を
明確にし、移民受け入れが国家の富を増すような方策を
政府が編み出すよう提言している。(実際問題としては、
国民の頭からゼロサム思考を取り去ることは難しいだろうが)
この本の著者は、このゼロサム思考を弾丸のように16歳の
あたまに打ち込んでいるようにも読める。
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p 208 資本は議会に命令する。
前任のバラク・オバマも選挙公約の大半を覆えし、多国籍資本に
言われるまま政策を転換しました。オバマが使った軍事費は
イラク戦争を引き起こしたブッシュ政権よりも多く、退任の
間際には10兆円のミサイル防衛計画まで承認したのでが、
これは彼が削減した福祉予算と全く同じ額だったのです。
そして後任のドナルド・トランプも戦争予算を捻出するため、
国の債務をさらに増やすと宣言しているのです。このように、
政治のトップを繰る力を持つ企業や団体を「非国家的行為主体」
といいます。
p209 だから戦争は永久に無くならない
軍事はアメリカの基幹産業です。国防総省と直接取引のある
企業が2万2千社あり、その下請けとして1万2千社が連なります。
周辺のサービス業などを入れると優に1000万人を超える
のです。だから一定周期で紛争を起こさなければ膨大な失業者
を出すだけでなく、経済そのものが破綻するのです。このように
政治は企業や団体の利益調整の手段であるという見方を「集団理論」
といいます。
p 210 憎悪と対立を煽れば支配が容易になるという論理
G・オーウェルの「1984年」には巨大スクリーンに向かい、
民衆が毎日決まった時間にののしりの言葉を吐きかける「2分間憎悪」
のシーンがあります。そして現代のニホンでも中国や韓国や北朝鮮に
対し敵愾心を煽るニュースが定期的に流されます。結局いずれも内政や
外交の矛盾を誤魔化すために架空の敵を捏造しているのです。このように、
相手国を憎むことを規範として叩き込む政策を「憎悪の倫理化」と
いいます。
p 211 暴力の思想が今に繋がる
ここ数年ネットや街頭デモなどで「政府に不服だというなら日本から
出ていけ!」という常套句が多用されています。しかしこれは最近の
言葉ではなく、1869年に神道強化策が推進された際その障害となる
キリスト教徒を弾圧するために用いられたスローガンだったのです。
結局のところ私たちの社会は明治から令和に至るまで地続きであり、
戦時の思考と平時の思考の境に段差が無いシームレスな営みなのです。
このように言葉の使われ方から社会を分析する取り組みを
「言語論的転回」といいます。
******************************
p228. 学校は「準軍隊なのだから、残酷なのが当たり前」
高校の教科書から「基本的人権の保障」や「平和主義」などの言葉が
削除され、その代わりに「愛国心」という言葉が盛り込まれることに
なりました。これは税金を軍事に優先して使う先軍体制が国策化
されたことと、集団的自衛権により自衛隊が米軍の下部組織として
再編されたことによるものです。つまり国は周辺国との紛争が生じたり
アメリカが侵略戦争を始めた場合、何も考えずに徴兵に応じる若者を
大量に生産しようとしているのです。このように教育機関の体裁を
取りながら、実際は軍隊の予備組織である学校などの機構を
「パラ・ミリタリー」といいます。
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🦊: 同感!
最近の朝日新聞の寄稿記事の中に、「なぜウクライナ政権は
退陣して(ロシアの傀儡政権に道をゆずり)戦争の早期収束を
はからないのか?というのがあった。16歳のあなたはどう
思いますか?
現代人の心の中には、国籍を失い、代わりに(侵略者だから
粗暴な奴らに決まっている)他国の奴隷になるなんて、絶対
イヤダ!という部品が脳の中に埋め込まれている。
軟弱者のキツネだって、そんなのイヤダ。たとえ戦争に
駆り出されようとも。相手側の幼児や年寄りが犠牲になろうと、
ミサイルを打ち込め!・・だからこの2者択一は、筆者が侵略
された当事者でないからか、民族国家に反対の「超自由人」
だからか。又はただの「事なかれ主義者」か。
政権によるプロパガンダのある無しに関わらず、現代人は国家に
よって動員されるきまりだ。さもないと、「国家が滅びる」かも。
「滅びゆく国に生まれた君たち」と呼ばれ、外国人に日本国籍を
与えて、生活保護も与えると、それが日本という国を滅ぼす
と言われれば、そうかなーと思ってしまう。本当にそうかな?
まだ若い諸君は、「重層化する危機を乗り越えるためには、
自分であり続けるために、国策の罠を見抜き、自己を進化させ
なければならない」と、秋嶋氏はいうが、簡単ではない。
雑草と野草に囲まれた日々を送っている老人にも、刷り込まれた
「日本良い国」の「曖昧主義」」の嘘がどこかに残っているかも
しれず。「自己超克」などありえない。あるとすれば、「若返る」
しか無いんだから。しかし、日本が滅びゆく国とは思いたくない。
若者よ、本を読め、と言いたいね。退屈せよ、迷え、そして本を
読め、だな。(エラソーに)
🦊:キツネから16歳の君たちへ
2022年10月13日の朝日新聞のインタビュー記事の中に、秋嶋氏の
「移民が日本を崩壊させる」という意見と正反対の1ページを見つけた。
ぜひこちらも読んでほしい。
移民と作る「私たち」
ーー民族や宗教以外の市民的要素を軸に、「国とは」を再び定義ーー
ジャステイン・ゲスト (政治学者、ジョージ・メイソン大学準教授)
🛑 ーー近著「Majority Minority]では、少数派である移民が多数派に
なった国や地域を調査していますね。ーー
「私が調査した国や地域(シンガポール、トリニダード・トバゴ、
バーレーン、モーリシャス、米ハワイ、米ニューヨーク)は、いずれの社会
も最終的には反動を経験しました。移民が増えると人々は不安になり、
人口動態の変化を心配するようになったのです。こうした国々では、
多様化する社会における国や国民の定義とは何か、「ナショナル・アイデンティティ」
をどのように新たに作り出すかという問いが生まれます。つまり、「ナショナル・
アイデンティティ」を何らの形で調整し、より包括的なものにするのかしないのか、
という選択です。」
ーー「近代の国民国家の多くが民族的アイデンティティと結びついて成立した歴史が
ある中で、ナショナル・アイデンティティを再定義することが出来るのでしょうか?ーー
「例えば米国では250年の歴史の中で、一貫して移民を受け入れてきた国です。
(それと比較して、移民受け入れが今後本格化するであろう)日本のような社会は、
変化の極めて早い時期に、政治的な問題を防ぐか、少なくとも軽減するために
行動できるという利点があります」
ーーでは、日本はうまく対応出来ているのでしょうか?ーー
「日本がしていることは、外国人に『一時的な労働者」というレッテルを貼ること
です。(移民労働者をいれるな、という人たちに対して)『良く思わないかもしれません
が、彼らは長く日本に住むわけではないので心配しないでください』というものです。
私は2つの理由から、これは有害だと考えています。1つには、外国人労働者の中には
在留期間を更新すれば無期限に住める人々もいるので、『一時的』という説明は正直
ではありません。
もう一つの問題は、国家にとっての弊害です。外国人に『あなた方は一時的滞在の
労働者だ』と言うことは、相互理解のための人間関係に投資していないことに
なるからです。彼らはイノベーター、発明家、経営者として社会に貢献する権利も
与えられないかもしれない。外国人の側も社会に溶け込もうとしなくなり、人々は
『外国人は社会に溶け込もうとしないから要らない』と考える負のサイクルに陥って
しまいます」・・・
ーー日本人の場合は、労働力や競争力確保のために外国人は受け入れるが、民族的な
アイデンティティは保ちたいという考えが、定住を前提としない受け入れにつながって
いると思います。ーー
「そうでしょうね。(ナショナル・アイデンティティの再定義には、シビック・コンポーネント
=市民的な要素を強調することが重要だと思いますが)『日本人とは何か』ということには
市民的な要素が含まれていると思います。」
ーー市民的な要素とは、例えばどういったものですか?ーー
「まずは米国について考えてみましょう。米国には、民族や宗教とは関係なく、地球上の
どの国とも違う、アメリカを特徴づけるあるものがあります。
その一つが『可能性』という考え方で、アメリカン・ドリームという概念につながる
ものです。これは人権や宗教とは関係ありません。市民的なものです。・・
アメリカや日本の文化の真の試練は、(移民増などの変化に不安を感じている人々を
説得し)人口の動態が変わり、世界が変わる中で、進化していけるかどうかということ
です。
(米国はこれからも)白人が少数派になっていく傾向は続くはずです。白人の出生率は
アジア系を除くほかの民族グループよりも低い傾向が続いているからです。
🛑「高齢化社会で若年人口を増やすこと以上に、国家の存続に焦点をあてた取り組み
があるでしょうか。これは国家とその国際競争力を維持するものです。移民受け入れと
それに伴う人口動態の変化が国家の存続に不可欠であると、ナショナリズムに訴え
かける主張は非常に説得力があると思います」
(聞き手・ 大島隆)
21世紀に生きる君たちへ
司馬遼太郎著 朝日出版 1999年初版より
🦊この本は買ってから5分で読みおわった。小学3年生の
教科書向けに書かれたものらしく、美しい言葉が並ぶ。
p10 つまり、私ども人間とは自然の一部にすぎない、という
率直な考えである。このことは、古代の賢者たちも考えたし、
19世紀の医学もそのように考えた。ある意味では平凡な事実に
すぎないこのことを、20世紀の科学は、科学の事実として
人々の前に繰り広げてみせた。
20世紀の人間たちは、このことを知ることによって、古代や
中世に神を恐れたように、再び自然を恐れるようになった。
おそらく、自然に対していばり返っていた時代は、21世紀に
近づくにつれ、終わっていくにちがいない。「人間は、自分で
生きているいるのではなく、大きな存在によって生かされている。」
と、中世の人々は、ヨーロッパにおいても東洋においても、その
ようにへり下って考えていた。
この考えは、近代に入ってゆらいだとはいえ、近ごろ再び、人間たちは
この良き思想を取り戻しつつあるように思われる。そうなれば、21世紀
の人間は、より一層自然を尊敬するようになるだろう。この自然への
すなおな態度こそ、21世紀の希望であり、君たちへの希望でもある。
そういう素直さを君たちがもち、その気分を広めてほしいのである。
そうなれば、21世紀の人間は、より一層自然を尊敬することになるだろう。
そして、自然の一部である人間同士についても、前世紀にも増して尊敬しあう
ようになるのにちがいない。そのようになることが、君たちへの期待でもある。
p16 自然物としての人間は、決して孤立して生きられるようには作られて
いない。このため、助け合うという気持ちや行動のもとはいたわりという感情
である。
「いたわり」「他人の痛みを感じること」『やさしさ」この3つの言葉は
もともと一つの根から出ているのである。根といっても、本能ではない。
だから、私たちは訓練をしてそれを身につけねばならないのである。
p23 洪庵のたいまつ
世のために尽くした人の一生ほど、美しいものはない。
緒方洪庵は、29歳のとき、大阪で診療をする一方、塾をひらいた。・・
洪庵は自分の塾の名を適塾と名づけた。日本の近代が大きな劇場
とすれば、明治はその華やかな幕開けだった。適塾は、日本の近代の
ための稽古場の一つとなったのである。すばらしい学校だった。・・・
ある時期の塾頭(全塾生代表)として、のちに明治陸軍を作ることになる
大村益次郎がいたし、後に慶應義塾大学の設立者になる福沢諭吉もいた。
洪庵は自分の恩師たちから引き継いだたいまつの火をより一層大きくした
人であった。彼の偉大さは自分のたいまつの火を弟子たちの一人一人に移し
続けたことである。
弟子たちのたいまつの火は、のちにそれぞれの分野であかあかとかがやいた。
やがてはその火の群れが、日本の近代を照らす明かりになったのである。
後世の私たちは、洪庵に感謝しなければならない。 (おわり)
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🦊: 小学3年生のレベルとはいえ、司馬遼太郎の(華やかな)明治時代礼賛と
21世紀への甘い期待と勘違いにみちており、キツネはどうもいただけない。
1999年と2019年のあいだに、司馬氏「21世紀(互いに助け合う人類の世紀)
に生きる君たち」と秋嶋氏「日本という滅びゆく国に生まれた君たち」の
認識の落差をもたらす何があったというのか?これはひとつ文部省に
質問状を出してみなくちゃ。
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「暴力を減らす力、人の本性に」
朝日新聞 10月5日 スティーブン・ピンカー氏(実験心理学者、
ハーバード大学教授)へのインタビューより
「現代はもっとも平和な時代」という見解を、ピンカー教授は
お持ちかとおもう。ロシアのウクライナ侵攻後も、同じことが言えるか。
🛑 人類史を通してみると、暴力は減少傾向にある。これは見解ではなく、
データが示す事実だ。世界全体の戦死者は減ってきた。殺人の発生率が
時代と共に低下してきたことも、犯罪史の研究や統計が示している。
前年より必ず減る、と言っているわけではない。数値が上下を繰り返し
ながら、長期で見ると暴力は減ってきた。2022年のデータはまだ無いが、
ウクライナ侵攻の影響で21年よりは悪化するだろう。減少傾向が逆転する
可能性もあるが、例えば核兵器の脅威が現在、冷戦期よりも高まっている、と
いった観測には私は懐疑的だ。「次に(戦争で)核兵器が使われるのは時間の
問題」という予測は、77年前に長崎で原爆が使われてから、常に裏切られてきた。
核兵器の数も1980年代の6分の1に減っている。
ーー人類はどうやって暴力を減らしてきたのか。
多くの暴力は、自分の命が奪われるかもしれないという恐怖からうまれる。
対立する人や暴力のほかに、統治機関や裁判制度のような第三勢力があれば、
「やられる前にやる」という誘惑を減らすことができる。国際社会だと、
国連がそれに当たる。民主主義のシステムも戦争を減らす。軍に動員される
人たちは、(選挙などを通して)指導者が国を馬鹿げた戦争に向かわせないように
する力がある。商取引も戦争のリスクを軽減する。品物を盗むより買う方が
安上がりなら、奪うために他国を攻めることはしないだろう。ノーベル平和賞を
受けた欧州連合(EU)では、加盟国は互いに攻め込む原因かない。
こうした暴力を減らすシステムを生み出してきたのが人の「合理性」だ。
ーー合理性とは何か
合理性とは目的を達成するために知識を用いることだ。人類は生物の中で
最強でも最速でもないが、地球を支配し、個体数を増やし、月にも到達した。
すべての人の合理性がもたらした結果だ。大学や政府といった組織を作って
知識を蓄えたり、より高次の合理性を得るための行動規範を作ったりしてきた。
個人の合理性には限界があり、完全にはなりえない。アイデアの弱点を特定し、
批判する力を集団で持たなければ、合理性は高められない。そのためには知識を
共有する必要がある。研究者なら、誰もがアクセスできるよう、論文で発表する
ことを求められる。
ーー合理性を追求すれば、暴力を無くせるのか。
暴力は減らすことはできても、ゼロにはできない。なぜなら人には本性があり、
生まれながらにして復讐心や支配願望や、サディズムといった暴力的な面を持つ
からだ。それらは人類の進化の歴史の一部だと、私は過去の著作で論じた。
一方で人の本性は共感する力や、暴力を解決すべき問題として捉える合理性も持って
いる。人の本性の中にいるこれらの「善なる天使たち」は、組織や規範から力を
もらいながら、暴力を克服してきた。
善なる天使たち、という言葉は、リンカーン大統領の演説に由来する。私は天使の
存在は信じていないが、この呼び名は美しく、私が心理学の深淵な洞察だと考えて
いるものを的確に表現している。
人の本性は様々な部分からできていて、合理性や共感、自制心などの「天使たち」
が凶暴な側面を押さえつける。そうすることで、人類は歴史を良い方向へ変えていく
ことが出来ると、私は考えている。 (聞き手・真野啓治)
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🦊: 小さいとき、親から「我を張るな」「ヘリクツ言うな」と言われた。父親は
家庭内警官であり、ある意味国家によって義務を負わされていたんだ。そう
考えざるをえない。
「人の本性はさまざまな部分から出来ていて、合理性や共感、自制心などの
「天使たち」が凶暴な面を押さえつける。そうすることで、人類は歴史を
良い方向に変えていくことが出来る」というピンカー氏の言葉はまことに
貴重だ。しかし、残念ながら、もう手遅れかもしれない、ともキツネは
心配している。
だが、若者諸君の国際交流の中から、もしかしたら天使が甦るかもしれない。
若い諸君の連帯に希望を託したい。
10月12日