武力による現状変更:ほくそ笑むロシア
🦊 : 「非人道的」とされ、世界中から非難を浴びている
ウクライナ侵略だが、実はこれが初めてじゃない。世の中が
米大統領選挙騒動や、コロナ禍に紛れて、あまり報道も
されなかったナゴルノカラバフ紛争は、只今のウクライナ
侵略とそっくりなんだそうな。
「ナゴルノカラバフ紛争再燃。緩む国際秩序にほくそ笑む
ロシア」 マクシム・クリロフ
WEDGE Infinity 4月22日
旧ソ連のアルメニアとアゼルバイジャンで、凍結状態にあった
ナゴルノカラバフ紛争が再燃した。武力による現状変更が
しばしば追認される現状は、冷戦後の国際秩序の変化を示して
いる。
新型コロナウイルスの第2波の到来と米大統領選挙の最中、
突然勃発した「第二次ナゴルノカラバフ戦争」。1ヶ月半ほど
続いた戦闘ののち、2020年11月10日のモスクワ時間
午前0時に停戦合意が発効したが、両者の対立はむしろ
激しさを増す一方だ。
対話の目途を立てられず、30年近く「凍結状態」に
あったこの国際紛争は、なぜ今になって再燃したのか。
同盟国の敗北を意味する停戦合意の締結を促したロシア
の思想は何だったのか、そして、遠く離れた日本にとって
この戦争は全く関係のない「対岸の火事」なのか。
本稿では、多くのメディアに看過されたナゴルノカラバフ
が持つ意味を、この3つのテーマを中心に検証する。
図1 本文から転写
1994年にアルメニア側の圧勝で終わった第1次ナゴルノカラバフ
戦争の結果として、アルメニア人が多数を占めるナゴルノカラバフ
自治州を含むアゼルバイジャン領土の一部は、アルメニアの支配下
に置かれた。
自治州は、事実今日の独立国家の「アルツァフ共和国」となり、
自治州以外の占領下のアゼルバイジャン領土は、「アルツァフ
共和国」を囲む「緩衝帯地帯」の役割を果たすようになった。
第2次ナゴルノカラバフ戦争は、この現状を一気に覆した。
専門家の予想を大きく上回る勝利を収めたアゼルバイジャンは、
「緩衝地帯」のほぼ全域を取り戻し、「アルツァフ共和国」の
今後に一切言及していないが、合意に基づいて「アルツァフ共和国」
とアルメニアをつなぐラチン回廊に配備されるロシアの平和維持部隊
の存続を事実上保障することになる。
なぜ30年以上も断続的な小競り合いに留まっていた紛争が、大規模な
衝突へと発展したのか。アゼルバイジャンが侵攻を決断した理由には
大きく言って、3つあると思われる。
1つ目は、長年に亘り行われた和平交渉が奏効しなかったことである。
2018年までナゴルノカラバフ出身の人物が、大統領と首相の地位に
あったアルメニアは、交渉自体に対して極めて消極的であり、
アルメニアの世論もアゼルバイジャンへのいかなる譲歩も一貫して
拒んできた。結局のところ、空回りし続ける外交に失望感を募らせて
いたアゼルバイジャンは、膠着した現状を武力で一気に打破するという
選択肢を選んだ。
2つ目の理由は、両国間のパワーバランスがこの数年で大きく
アゼルバイジャン側に傾いたことである。産油国であるアゼルバイジャン
は、00年代の半ばにおいて、世界で最も急激な経済成長を遂げた
国の一つとなった。14年時点でアゼルバイジャンの名目国内総生産(GDP)
と軍事費はアルメニアのおよそ7倍までふくらんだ。その後その差は多少
縮んだものの、アゼルバイジャンが急速に進めてきた軍の近代化が、
今回の進攻に有利な状況を作り上げたのは間違いない。
3つ目の理由は、ロシアとアルメニアの関係の冷え込みである。18年の
民主主義革命で誕生したアルメニアのパンシャン政権は、従来の親露路線の
部分的な見直しと共に、外交的政策の多角化政策の一環として、欧米との
接近も試みた。旧ソ連圏で度々起こる革命に当初から強い警戒心を持っていた
ロシアは、集団安全保障条約機構(CSTO)の加盟国であるアルメニアが
「両賭け」をしているのを見て、不満を隠さなかった。それを見たアゼルバイジャン
は、多少のエスカレーションでもロシアは待ったを掛けないと予想した。それは
見事に的中し、地域大国トルコの支援も取り付けたアゼルバイジャンは戦闘
開始後も、限定的な進展に満足せず、最後までアルメニアに強行姿勢で望む
ことができた。
図2 本文から転写
「強力なロシアの立ち回り」
同盟国アルメニアの敗北を黙認し、アゼルバイジャンを後押ししている
トルコによる地域への介入までしてしまったロシアは、一見すると損を
しているように思える。だがそれは見当違いだろう。第一に、ロシアの
仲介で行われた11月10日の停戦合意で実現したナゴルノカラバフの
「平和維持部隊」の配備によって、この地域一帯におけるロシアの影響は、
むしろ格段と強くなったのである。
旧ソ連圏や中国の紛争には必ず一枚噛もうとするロシアの狙いは、それらの
紛争の行方に関する一切の取り決めに対して、「拒否権」を得ることにある。
その拒否権が持つ価値は紛争の当事者、さらにいうと、ロシアと他の関係国
の関係組織とのやりとりにおいて、貴重なカードとなっている。今回の
紛争で、一戦も交えないで、平和維持部隊というカードを手に入れたロシアは、
大いに得したと言えよう。
第二に、アルメニアの敗北は、最初からロシアの計算のうちに入っており、
むしろモスクワにとっては最も望ましいシナリオだったと思われる。周辺国
に対するロシアの戦略を最も的確に表す言葉は「フィンランド化」であろう。
1939年〜‘44年までの間に、2回もソ連と戦火を交え、敗戦したフィンランド
は、戦後の冷戦期、市場経済や民主的な体制を維持する一方、外交政策
においてはモスクワの逆鱗に触れるような動きを一切避け、一貫して中立を
保ってきた。
旧ソ連圏の文脈でいう、フィンランド化とは具体的に2つのNOを意味する。
一つ目は、内政において反ロシア的なレトリックを助長しないこと。
二つ目は、外交においてロシアに敵対するNATOのような組織や2国間
条約に参加せず、将来的にもそれらに参加する意図を持たないことだ。
第二次ナゴルノカラバフ戦争で、最後までアルメニアと一定の距離を保ち
続けたロシアの狙いは、アゼルバイジャンの手を借りて、アルメニアの
立場を悪化させ、同国を従来の親露路線に戻し、そのフィンランド化を
半永久的なものにすることだ。
屈辱的な停戦合意に署名したアルメニアのパシニャン政権が比較的近い
うちに辞職に追い込まれる公算は大きい。極限に弱ったアルメニアを
受け継ぐ後継者は、ナゴルノカラバフ紛争自体が最終的に解決されない
限り、モスクワの不満を招くような行動を控えるだろう。
「超大国なき国際秩序」
今回の戦争で、武力による現状変更を黙認してしまったのは、ロシアだけ
ではない。米国や日本など西側諸国も同様で、国際社会は一様に鈍い
リアクションを示したことは、今回に限定した事態ではない。ソ連の
崩壊後に超大国・米国によって築き上げられた国際秩序は、明らかに
衰退している。グローバルな「パクス・アメリカーナ(米国による
平和)」の代わりに誕生していくのは、トルコやロシアのような地域大国
による勢力圏だ。こうした勢力同士の競争を伴う「秩序の局地化」が
国際関係を形成していくだろう。
日本の戦国時代にも似ているこのような構造は、冷戦期の1極体制よりも
はるかに不安定である。ナゴルノカラバフのような長年にわたって凍結
状態にあった紛争が、これからも次から次へと再燃していくだろう。
それはアルメニアのように安全保障において自らよりも強い同盟国に
頼らざるを得ない日本にとっても、看過できない問題である。・・
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🦊 : 前回はうまうまと成功した。ところが今回は、こちらの思惑通り
の条件で、停戦協定に持ち込めそうもない。どうしよう・・
とプーチン氏は青くなっているだろう。製鉄所地下の一般人を、まず
国際赤十字のバスに乗せて避難させ、後は軍を増強して南部制圧を
やり遂げる。戦争は長期化する。それはプーチンにとって不味い結果を
招く。
またはドカンと1発、核兵器をウクライナ西部に打ち込む。
核兵器使用はまだ禁止されていないし、早いもん勝ちだ。それで
怖気付いたNATOおよびアメリカは、降参して、ウクライナを
売るだろうと、プーチンは考える。とりあえず、5月9日には間に合う。
風に乗って西ヨーロッパに拡散した核物質をどうするか、彼は考えたく
もないが、「核兵器使用は、やむを得なかった。正義は我にあり」で
押し通そう。全ロシア国民が後ろについている。
最後の、最も手っ取り早い手段は、プーチンの自死だが、これがまた
一番ありそうもない。彼は、他国の民族紛争を解決に導く「平和維持の
軍師」として歴史に名を残したいから。自決は敗北宣言だから。
何しろロシアはあのヒトラーに勝ったのだから・・
なーんて、眠れぬままに、不謹慎な想像をしてみる。
西側も、いつまでも力の出し惜しみをしてる場合じゃなかろう。
犯罪者には犯罪者並みの取り扱い法がある、と、中学生キツネは
思う。そして「垣根越しに火を投げ込む」戦争そのものを違法と
しなければならない、とも。
ところが、これが一番人気の無い提案で、だーれも賛成しない。
ギリシャの格言に、「戦争は我らの父」というのがあるそうな。
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